好き勝手に漫画の感想を書くブログ

最近は峰浪りょう先生が好きです

峰浪りょう読み切り「笑う金魚」感想

峰浪りょう先生の読み切り作品「笑う金魚」の感想です。
出典は週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号の299322ページです。

(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 299ページ、 著者:峰浪りょう

笑う金魚は、2008年のヤングサンデー増刊号に掲載された、峰浪先生2作目の読み切りです。前作かげろおから、ちょうど1年です。

この作品は国会図書館の複写サービスを利用して入手したのですが、ちょっと綴じ目が読みにくい。
表紙の吹き出しのアオリも「青春ってヤツーー小さな小さなーー」となっており、なんて書いてあるのか分かりません。気になるw

(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 304ページ、 著者:峰浪りょう

舞台が九州なのか登場人物は九州弁っぽい喋り方(詳しくは分からないけど)。
峰浪先生が九州のご出身だからでしょうか。

あらすじ

(私の主観でまとめたあらすじです)

主人公「初瀬太郎」は小説家になりたいと言って大学を辞めたが、地元のコンビニで夜勤をして怠惰に暮らしている。
幼なじみの和奈に4年ぶりに再開する。
夜、ビニールプールにふたりで入る。
和奈は彼氏と別れて、東京に行くことを決めた話をする。
自分はやりたくないことを避けてきただけという太郎に対して和奈は、動いていないと生きてるって言えないと述べ、「太郎君は、もう死んでるの?」と問いかける。
和奈が去った後、和奈が起こした波のせいで、ビニールプールの金魚は笑っているように見えた。

感想

とっても面白い!

峰浪先生の読み切り作品の中で、ある意味1番好きかもしれません。
かげろおに比べたら裸の男女が抱き合う点など絵としては性的ですが、内容は恋愛というよりむしろ人間の生き方について問う作品でした。

まず、タイトルの笑う金魚が良いですね。
(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 312ページ、 著者:峰浪りょう
(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 321ページ、 著者:峰浪りょう

子供の頃は笑っているように見えた金魚。
久しぶりに見たら笑っていなかった。
でも和奈が起こした波によって再び笑っているように見えた。

これだけで、この物語は主人公が「生きる力」を取り戻す話である、ということを的確に表現しています。
子供の頃の金魚は笑っていた、つまり太郎も子供の頃は「生きていた」んですね~。

(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 315ページ、 著者:峰浪りょう

太郎の台詞「やりたいことって、けっこーない。けど、やりたくないことはけっこーある。今はそれを避けてきた場所に必然的に立っとるだけ。」

めっちゃわかる。

自分が何を大切にしてるかって自覚しないと中々分からないものです。
なんだかんだである程度自分で選択した結果で今があると思うけれど、何を根拠にして生きてるか分からないから、何処がターニングポイントでその時自分が何をしたかなんて全然分からない。これからどうするかももちろん分からない。
きっとこの作品の主人公もこんな生き方してるのでしょう。
(感想という名の自分語り終了)

(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 315ページ、 著者:峰浪りょう

これに対して和奈は「波が発生することで海から生命が生まれた、動きがないと生命になれない」と語ります。
停滞は後退。常に前へ進まないといけない。
そういうことを和奈は言っているのだと思います。

これはグサッと来ますね~。
峰浪先生、厳しいなあ
この読み切り作品のあと、峰浪先生は溺れる花火やヒメゴトという名作を生み出してます。
だからこそ、今読んで説得力のある言葉です。

(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 318ページ、 著者:峰浪りょう
(出典:週刊ヤングサンデー増刊20082月増刊号 319ページ、 著者:峰浪りょう

 和奈から抱き付いてくるけど、結局それ以上の展開はなく終了。
うーん、分からん。どう捉えればいいのだろう。

単純に今の太郎が駄目だって話なのでしょうか。例えば太郎がもっと目標に向かってガリガリ行く人間だったら和奈の対応は違った可能性はあるのか。
つまりは、これからの太郎の原動力として和奈との行為があったという考え方ですが、個人的にはどうもしっくりきません。

それとも、幼なじみという存在そのものが「過去」や「自分の選択以外の存在」の象徴なのでしょうか。
和奈が、自分で前へ進むために「幼なじみだから」という理由で繋がることを拒んだ、みたいな見方は十分ありそうです。
過去を取り戻そうとした太郎を遮った和奈の聡明さを示すと同時に、これまでの会話のみでなくこの行為が太郎が前向きに生きるきっかけになっているのかもしれません。

個人的には、「パッとしない男を幻惑する女」という構図は、溺れる花火の主人公や、ヒメゴトの根本祥に共通している気もします。
そう考えると、ここで突っ込んだ行為を追加すると、峰浪作品では必然的に男は堕落しまくる運命なのでしょうw

連載作品からは男女の性や恋愛のイメージが強い峰浪先生ですが、読み切り作品では一味違う峰浪りょうワールドが堪能できるのでオススメです。
まだ感想を書いていない3作品も、だいぶ濃いです。

おまけ

前述のとおり和奈は「月の引力によって起こる海の満ち引きつまり波が発生することによって、命は生まれることができるんよ」と述べます。

多分これの元ネタは、生命の起源の議論で登場する泡仮説のことだと思うのですが違うかな。
ざっくり言うと、泡の中、つまりごく狭い空間に分子が閉じ込められることでその中で化学反応が起きやすくなり、複雑な分子が合成されていった、という説。
あと、脂質で包まれた泡が細胞膜の起源になったという説もあります。

これを聞いて「動き続けることが生きること」だと考えられる感性、良いですね〜。
こういう感性、ほんの少しでいいから私にもほしいなあ。
生きるために動き続けるって意味の生命科学の用語では、赤の女王仮説なんかはすぐに思いつくんですけどね。
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